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大腸癌腹腔鏡下手術Q&A

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腹腔鏡下手術とは?
先ず、ポートと呼ばれる中空の管をおなか-腹部に刺し、ここから炭酸ガスを入れて腹部を膨らまします。このポートからCCDカメラを装着した腹腔鏡を挿入し、モニターに映し出された映像を通しておなかの中-腹腔内を観察します。手術操作を行うためのポートを更に3カ所、あるいは、4カ所挿入留置し、1カ所のポートから腹腔鏡で腹腔内を観察しながら、他のポートから入れた細長い腹腔鏡下手術用の手術器具を用いて手術を行ってゆく方法を腹腔鏡下手術と言います。
ポートの太さは?
通常は5mm径、10mm径、11mm径、12mm径のものを用います。
ポートはどのようにおなかに刺すのですか?
多くの施設では、お臍の皮膚を10mm切開し、その部位から小さくおなかの壁を開けた後、この部位より10mm径のポートを挿入留置します。
5mm径のポートの場合はどのように刺すのですか?
お臍の皮膚を5mm切開し、この部位に穿刺針という2mm径の針をおなかの中に刺し、これから炭酸ガスを注入し、おなかを膨らました後に5mmポートを穿刺、留置します。
なぜおなかを膨らませる必要があるのですか?
おなかを膨らませることにより、おなかと臓器、臓器間に空間が生まれます。この空間を利用して手術操作を行います。
おなかを膨らませるのに二酸化炭素を用いるのはなぜですか?
用いることが出来る気体の中で、最も安全で比較的安価だからです。
腹腔鏡とは?
先ず、望遠鏡を思い描いて下さい。望遠鏡の目を当てる部分にCCDカメラをつなぎます。望遠鏡と違うところは入っているレンズが1倍である点です。この望遠鏡に当たる部分を腹腔鏡と言います。腹腔鏡をポートから挿入し、おなかの中-腹腔内を観察します。CCDカメラは大きな画面のモニターにつながっており、腹腔鏡を通してみられる画面はこのモニターに映し出されます。
腹腔鏡を用いるメリットは?
5mmや10mmの①小さなアプローチ創から、腹腔内のどこでも、②近接した、③鮮明な映像をモニターを通して④複数の目でみることができます。
①小さなアプローチ創から見るとはどういう事ですか?
たとえば、腹腔内の直腸の最も奥を見るには、通常の開腹手術では下腹部を大きく切開して、なおかつ小腸を排除しないと見えませんが、腹腔鏡を用いればその先端をその部位に持ってゆけば見えます。
①小さなアプローチ創のメリットは?
おなかの創-開腹創を小さくすることにつながります。
②近接した映像とは?
通常の開腹手術では、腹腔内の対象物は、腹腔内に術者の顔を突っ込むわけにはいかないので術者の目からの距離で決まってしまいます。ところが、腹腔鏡を用いれば、見たい対象物にいくらでも近づくことができ、それをモニターを通して観察できます。モニターの大きさに応じて拡大して観察ができます。
②近接した映像を見るメリットは?
対象物がはっきりと見え、正確、確実な手術が可能となります。
③鮮明な映像とは?
通常の開腹手術では、腹腔内は術者の頭の上にある無影灯で明るく照らして対象物を観察します。この場合には腹腔内の奥にある、光が届きにくい部位では見えにくいのは当然です。腹腔鏡はそれ自体が光を出し、かつ、対象物にでき得る限り近づいて映し出すので鮮明な像を見ることが出来るのです。
③鮮明な映像を見るメリットは?
対象物を肉眼より明確に観察しながら手術操作が行えます。
④複数の目で見るとは?
通常の開腹手術で腹腔内の奥深くを観察するためには術者が他の臓器を排除して、やっと術者のみしか見えないという場面があります。腹腔鏡ではモニターを通して腹腔内を観察しますが、このモニターを見れば複数の人が同時に同じ映像を見ることが出来ます。
④複数の目で見ることのメリットは?
複数の目で観察することにより、より確実に手術を行え、より間違いを少なくし、より間違いを正すことが出来ます。
腹腔鏡下手術の最大のメリットは?
おなかの創-開腹創が小さくできることです。
開腹創が小さいことがなぜ良いのですか?
大腸癌腹腔鏡下手術を行うとおなかのキズが小さくなります-「開腹創の縮小化」→おなかのキズが小さいと手術直後の痛みを少なくすることができます-「術後疼痛の軽減」→痛みが少ないと、手術直後からベッドから起き上がることができます-「早期離床」→術後早くから体を動かすことにより腸の動きも活発となります-「排ガス、排便の短縮化」→腸の動きが良くなれば食事を早く始められます-「早期食事開始」→早く食事が始まり、順調に経過すれば早く退院できます-「早期退院」の図式です。
なぜ開腹創の縮小化が図れるのですか?
たとえば腹腔内のAからBまで手術操作が及ぶ場合、通常の開腹手術ではAからB、あるいは、それ以上の開腹創が必要となります。ところが、腹腔鏡下手術でAとB、そしてその間の手術操作を行うと、開腹創はAまたはBの周辺、AからBの間に小さく置くことで手術が完了します。
腹腔鏡下手術はどのように行うのですか?
ポートより約45cmの長さの腹腔鏡下手術器具を用いて手術操作を行います。行う操作は通常の開腹手術と何ら変わりはありません。
腹腔鏡下手術操作と従来の開腹手術下手術操作の違いは?
①長い腹腔鏡下手術器具を用いて遠隔操作を行う必要があること、②モニターを見ながら手術操作を行うことが最大の違いです。
長い腹腔鏡下手術器具を用いての手術には熟練を要しますか?
もちろんです。ただ、持って、挟んで、切って、結んで、縫うという基本動作に従来の開腹手術のそれと違いはなく、いわゆる「習うより慣れろ!」のたとえのとおり、何事も経験を積めば従来の開腹手術と同様にできます。
モニターを見ながら行う手術操作は熟練を要しますか?
修練が必要です。モニター画像は二次元で表現されていますが、実際には三次元の世界で手術操作を行う必要があります。ただ、目が慣れてくると脳で三次元像を作り出してくれるようになり、慣れを積み上げることにより従来の開腹手術操作と同様の手術操作が可能となります。
腹腔鏡下手術のデメリットは?
先に腹腔鏡下手術のメリットは-①小さなアプローチ創から、腹腔内のどこでも、②近接した、③鮮明な映像をモニターを通して、④複数の目でみることできる-と記載しましたが、①と②がデメリットにもなります。つまり、腹腔鏡という限られた範囲の映像を見ながら遠くの手術操作を行うので、モニターに映し出されている場面までの不注意な器具操作を行うと思わぬ副損傷を起こします。また、細長い手術器具を用いて慣れない手術操作を行うと開腹手術時には起こさないような不手際を生じる場合もあります。ただこれらのことは「症例を積み重ねた慣れ」で十分克服できる程度のデメリットです。
腹腔鏡のデメリットは技術面だけですか?
慣れない手術手技で行うことにより癌としての治療効果自体を損ねる事態も考えられます。ただ、稚拙な手技によりもたらされる癌の手術としてのデメリットは何も腹腔鏡下手術に限ったものではありません。要は、従来の開腹手術であっても、また、腹腔鏡下手術であっても、癌の手術としての目的を達成するにはある程度以上の技術が必要となります。腹腔鏡下手術の場合には従来の開腹手術+αの技術が求められることは確かです。
腹腔鏡下手術は最初にどんな病気に行われたのですか?
世界でも、また日本でも最初に行われたのは胆石症に対する胆嚢摘出術です。胆石の存在する胆嚢を摘出する手術であり、現時点でも最も数多く行われている腹腔鏡下手術です。
腹腔鏡下手術は胆石症以外ではどのような病気に行われていますか?
食道、胃、小腸、大腸、脾臓、子宮等の腹腔内の臓器や後腹膜臓器と言われる腎臓、副腎等の疾患に対し、広く行われています。
大腸癌腹腔鏡下手術とはどんな手術ですか?
大腸癌に対して行われる腹腔鏡下手術を大腸癌腹腔鏡下手術と言います。
日本で大腸癌腹腔鏡下手術が始められたのはいつ頃からですか?
1992年頃からです。
アメリカでの開始当初、ポート部位の再発例が多発し、一時は危険な手術法とも考えられていましたが、この点についてのご意見は?
当時のアメリカの手術例を検証すると、端的に言えば、-「癌の手術」が適正に行われていなかった-の一言に尽きます。その証拠に、当院をはじめとして、日本で経験を積んでいる施設ではポート部位の再発はほとんど報告がありません。
大腸癌腹腔鏡下手術は「おなかを開けない夢のような手術法だ」と言われますが、本当ですか?
多くのマスコミや、この手術を専門としない一部の医師は未だにそのような表現をとりますが、それは間違いです。おなかの中のものを切除し、かつ縫合、吻合する必要があるのですからおなかを開けないわけにはいきません。腹腔鏡下手術は「おなかを小さく開ける」ことを最大の特徴とします。
大腸癌腹腔鏡下手術は患者にとってどんな意味があるのですか?
簡潔に言えば、「手術後から退院までの患者の負担の軽減」にその意義があります。
大腸癌腹腔鏡下手術を行ったとしても1年後には意味があるのですか?
大腸癌腹腔鏡下手術は、「手術後から退院までの患者の負担の軽減」に大いなる意義を持ちます。1年後に意味があるとすれば、従来の開腹手術に比較してイレウス-腸閉塞の頻度が低くなることです。
大腸癌腹腔鏡下手術は従来の開腹手術に比較して手術時間が長いと聞きますが、患者に悪影響はないのですか?
悪影響はありません。手術時間は多少延長しますが、長い場合でも1時間以内であり、許容範囲と思われます。直腸癌手術では手術時間はむしろ短縮しています。
大腸癌腹腔鏡下手術の出血量は?
大腸癌腹腔鏡下手術の出血量は従来の開腹手術に比較して多くの症例で少量に止まっています。
大腸癌腹腔鏡下手術と従来の開腹手術は全く別な手術ですか?
大腸癌に対する手術方法として、大腸癌腹腔鏡下手術と従来の開腹手術が別々に存在するわけではありません。多くの経験症例を持つ我々の考え方は、一つの手術の手段、手技として腹腔鏡下手術が存在し、従来の開腹手術法と巧みに組み合わせて「開腹創の縮小化」をはかります。
大腸癌腹腔鏡下手術を受ける前に特別な検査は必要ですか?
「大腸癌腹腔鏡下手術と従来の開腹手術は全く別な手術ではない」と申し上げましたが、手術前の検査で特別な検査は何ら必要としません。
多くの検査を行い、情報がたくさんあった方が大腸癌腹腔鏡下手術が安全、確実に行えるのでは?
手術にはある程度の慣れとセンスが必要とされます。たとえば、明らかに目の前にある血管を不用意に扱って出血を招く場合もあります。逆に血管の走行は見えなくても、巧みに周辺の剥離操作を行えば、見えなかった血管が露出し、適切に処理できます。精密なレンズの表面が日本人の手磨きで完成されている如く、必要な血管を露出してそれを安全、確実に切離するという操作は術前の検査結果よりも手術の慣れとセンスがその結果をもたらします。
大腸癌腹腔鏡下手術は従来の開腹手術と比べて切除範囲を狭く取る「縮小手術」ですか?
大腸癌腹腔鏡下手術はいわゆる「縮小手術」ではありません。切除対象が早期癌であれ、進行癌であれ、進行程度に応じた大腸の切除とリンパ節郭清を従来の開腹手術と同様に行うのが大腸癌腹腔鏡下手術です。
大腸癌、特に、進行癌の場合には広範囲のリンパ節郭清が必要だそうですが、大腸癌腹腔鏡下手術でも従来の開腹手術と同様のリンパ節郭清は可能ですか?
可能です。進行癌では大腸から遠く離れたリンパ節郭清が必要とされますが、この遠くのリンパ節郭清を腹腔鏡下に行うことによって従来の開腹手術と同質のリンパ節郭清を行うと共に「開腹創の縮小化」をもたらすのが大腸癌腹腔鏡下手術です。
大腸癌腹腔鏡下手術は特殊な難しい手術ですか?
多くの経験症例を持つ私どもの施設では、大腸癌腹腔鏡下手術を特殊で困難な手術とは考えていません。
大腸癌腹腔鏡下手術では手で触れた感覚に乏しく、この点で従来の手術方法より劣ると聞きましたが?
大腸癌の手術に限らず、癌の手術では癌そのものを手で触れること自体をよしとしません。従って、大腸癌腹腔鏡下手術では癌を直接触れることができないから従来の開腹手術より劣っているとの考えは間違いです。大腸癌腹腔鏡下手術では45cmの長い鉗子を用いて手術操作を行いますが、経験を積めば、45cm向こうの先端で触れるものが固いか軟らかいかの触感を感じ取ることは可能です。
大腸癌腹腔鏡下手術実施率とは?
大腸癌手術例全症例に対して大腸癌腹腔鏡下手術が行われた割合を言います。この数字は大腸癌腹腔鏡下手術を積極的に行っているや否やの一つの指標になると思われます。読売新聞による2007年の調査によれば、大腸癌腹腔鏡下手術実施率が50%を超えているのは全国で31施設に過ぎません。
大腸癌腹腔鏡下手術実施率は?
私どもの経験症例から言えば、大腸癌腹腔鏡下手術実施率は、2007年以降では95.9%です。
大腸癌腹腔鏡下手術の適応症例は?
現時点では90%以上の症例に大腸癌腹腔鏡下手術を行っていますので、適応症例と言うよりは、適応とならない例を挙げます。
当院の基準で大腸癌腹腔鏡下手術の適応とならないのは、非治癒手術例、癒着例、他癌合併例、腸閉塞例、他臓器浸潤例、腹膜炎例、心疾患や呼吸器疾患、他の重篤な合併症の合併例等です。
非治癒手術例とは、大腸癌が高度に進み、癌が取り切れない場合を言いますが、このような場合には開腹創の縮小化が困難であり、開始当初は適応としていなかったのですが、近年はこのような症例でも積極的に大腸癌腹腔鏡下手術を行っています。
癒着例とは、多くは開腹手術の既往があり、おなかの中の腸管癒着が強い例で、癒着の剥離が困難な場合や長時間を要する場合には開腹手術を行います。
他癌合併例とは、おなかの中の他の癌-胃癌等を同時切除する場合で、開腹創の縮小化が困難であれば適応とはなりません。
腸閉塞例は、大腸癌のため腸閉塞状態で手術となる場合で、おなかの中が拡張した腸管で満たされているため適応となりません。
他臓器浸潤例とは、大腸癌が周辺臓器に浸潤して大きな腫瘍塊を形成しているため適応となりません。
腹膜炎例は、腹膜炎の状態で緊急手術となる場合で、機敏な対応が必要で適応となりません。
心疾患や呼吸器疾患、他の重篤な合併症の合併例では、迅速な手術が求められる場合は適応となりません。
大腸癌腹腔鏡下手術は早期癌にしか適応がないのですか?
当院ではそうは考えていません。そもそも早期癌では進行癌よりも縮小手術が可能であり、当然のことながら開腹創も小さくてすみます。大腸癌腹腔鏡下手術の多くの経験を持つものから見れば、むしろ早期癌では大腸癌腹腔鏡下手術のメリットを発揮しがたいと考えています。そして、大腸癌手術例中、早期癌の占める割合は20数%に過ぎず、20数%の大腸癌にしか大腸癌腹腔鏡下手術を行えないとするならば、その存在価値は極めて低いと言えます。
大腸癌腹腔鏡下手術は進行癌も適応としているのですか?
はい。先に記載いたしましたが、大腸癌腹腔鏡下手術は手術手技の一つの手段と捉えています。進行癌といえども、大腸の切除範囲、リンパ節郭清範囲は従来の開腹手術による手術手技にまさるとも劣らない程度に行うことが出来ます。
大腸癌腹腔鏡下手術を進行癌にも積極的に行っているそうですが、「癌の手術」としての質は保たれていますか?
「癌の手術」としての質の担保は生存率でしか表現できませんが、どのstageの生存率を大腸癌研究会全国集計の成績と比較しても、劣る成績はありません。
大腸癌腹腔鏡下手術はステージⅣ症例にも行っているのですか?
はい。大腸癌腹腔鏡下手術の目的の主体が手術後の苦痛の軽減にあることより、ステージⅣ症例であっても極力開腹創の縮小化を図るように努めています。
ステージⅣ症例に対しては開始当初から行っていたのですか?
いいえ。開始当初は適応としていませんでした。その理由は、ステージⅣ症例では腫瘍自体が大きく、かつ、リンパ節転移と一塊になっていることも多く、「開腹創の縮小化」効果が少ないと考え行っていませんでした。
ステージⅣ症例にもなぜ行うようになったのですか?
ステージⅣ症例以外の症例ほどではないにしても、極力「開腹創の縮小化」を行うことによって術後から退院までのより快適な入院生活が送れると考えたからです。
ステージⅣ症例で肝転移切除を伴う場合も大腸癌腹腔鏡下手術を行うのですか?
はい。少なくとも大腸癌手術部分の「開腹創の縮小化」は図れます。
他の施設では、横行結腸癌、脾弯局部の授動術、直腸の授動術は腹腔鏡下には行わないとも聞きますが?
経験症例を積めば、この部位の腹腔鏡下手術操作こそが大腸癌腹腔鏡下手術の特徴を引き出せる事が分かってきます。
開腹移行率とは?
大腸癌腹腔鏡下手術操作を行っていて、何らかの理由で従来の開腹術に移行した率を開腹移行率と言います。開腹移行にいたるには、患者側の要因もあれば、術者側の要因もあります。術者側からの要因に目を向ければ、大腸癌腹腔鏡下手術の短期的な質を表す一つの指標になると思われます。
開腹移行率は?
私どもの経験症例から言えば、2007年以降の開腹移行率は0.2%です。
開腹移行例にはどのような症例がありますか?
実際の開腹移行例は30例です。その内訳は、術中に何らかの偶発症を来した症例が13例、腸管の癒着によるものが10例、腸管拡張例が3例、癌の周辺臓器浸潤によるものが3例、術中の結腸血行障害例が1例でした。
術中偶発症とは?
大腸癌腹腔鏡下手術を行っていて従来の開腹手術ではあまり起こし得ない偶発症を取り立てて「術中偶発症」と表現しました。ただ、術中に起こりうる偶発症が腹腔鏡下手術操作中に特段に起こるわけではありませんが、「慣れた従来の開腹手術」ではあまり起こらないが、「慣れない腹腔鏡下手術」なればこそ引き起こされたと思われる偶発症を「注意喚起」のために取り上げたものを「術中偶発症」と表現しました。
偶発症率とは?
大腸癌腹腔鏡下手術操作中に術中偶発症を来してやむを得ず開腹移行にいたった率を偶発症率としました。偶発症率は大腸癌腹腔鏡下手術の短期的成績を表現するものと思われます。
偶発症率は?
私どもの経験症例から言えば、偶発症率は2007年以降では0%です。
偶発症にはどのような症例がありますか?
術中偶発症を来たし、開腹移行を余儀なくされた症例は13例で、血管損傷8例、小腸、結腸損傷は各2例、膀胱損傷は1例でした。2007年以降では、術中遇発症で開腹移行を余儀なくされた症例は1例もありません。ただ、これらの術中偶発症は大腸癌腹腔鏡下手術時に起こる特有のものではなく、通常の開腹手術の時にも起こりえますが、これを修復するに当たって開腹に移行せざるを得なかったものであり、幸いにも、大腸癌に対する手術そのものに悪影響をもたらした例は1例もありません。
大腸癌腹腔鏡下手術を受けた場合、再発しやすいですか?
再発しやすいという事実はありません。生存率で見ると、当科に限らず、大腸癌腹腔鏡下手術を積極的に行っている施設ではいずれも「従来の開腹手術より悪い」との成績は出ていません。
大腸癌腹腔鏡下手術を受けた場合、治りやすいですか?
大腸癌腹腔鏡下手術を行うか、従来の開腹手術を行うかは単純に手術操作上の差違であり、大腸癌の予後と関わりがないというのが現時点での見解です。ただ、私どもの生存率から見た場合、各stage間で「従来の開腹手術より悪い」との成績はありません。むしろ、近年の成績では生存率は大腸癌腹腔鏡下手術の方が少し良くなっています。